2014年2月18日火曜日

恋人達が自分をこの世から消すことで

恋人達が自分をこの世から消すことで、相手の胸に深い創(きず)をあたえるように、まるでそのようにして父は私の胸に鋭い刺(とげ)をのこした。父との別れを思い出す度に、私はその刺を感じる。柔らかい、よく撓(しな)う、あの若いばらの刺のように、その刺はやさしい。そうしてその為に一層痛いのだ。

森 茉莉

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